稲光誠一税理士事務所

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たばこ1箱が1000円に!? 2008/07/01

1974年に制定され34年も続いたガソリン税の「暫定」税率問題は、期限切れになったかと思えば1ヶ月後には再延長が決まり、その間ガソリンの値段は下がったり上がったりで、ねじれ国会のドタバタ劇に付き合わされたあげく、結局は今後さらに10年間「暫定」税率が続くことで落ち着いた。そういえば、一方で1998年に制定された所得税や住民税の定率減税は、「恒久」減税と言われて導入されたものの、たったの6年であっさり廃止されてしまったし…。
暫定というと一時的なもの、恒久というとずっと続くものという意味のはずなのに、これじゃ日本語があべこべやないか!と、思わずつっこみたくなってしまう。つっこむだけで話が済めばいいが、ことガソリンに関しては、暫定税率復活による値上げ以上に原油価格の高騰が続いており、もはや税制で対処できる段階ではない状況に陥ってしまっている。原油価格の高騰は国民生活や産業を直撃するだけに、今後の動向が注目されるところだ。

このような状況の中で、今度はたばこ税の大幅増税に向けての動きが活発化しそうだ。与野党を超えた国会議員のあいだで、たばこ1箱の平均価格を欧米並みの1000円に値上げすべきだとの論調が高まってきているのだ。中川秀直自民党元幹事長、前原誠司民主党副代表ら超党派の国会議員が中心となって既に「たばこと健康を考える議員連盟」を発足させ、たばこの喫煙による健康被害とも絡めて世論の理解を求め、今秋をめどに提言をまとめ、年末の税制改正に反映させる方針のようだ。
きっかけは、日本財団の笹川陽平会長が産経新聞「正論」欄に寄稿した論文だそうだ。
笹川氏の論文によれば2007年の国内消費量は国産、外国産を合わせ年間約2700億本、これに伴う税収は約2兆2000億円。1箱1000円に値上げした場合の1本当たりの価格は約15円から50円に上がり現在の消費量で単純計算すると、これに伴う税収増は9兆5000億円になるという。

ところで、たばこ税とひとまとめにいっているが、たばこにかかる税金は5つあることはご存知だろうか。1つは国のたばこ税で、1箱20本300円のたばこの場合、71.04円。2つめが道府県たばこ税で、同じく300円につき21.48円。3つ目は市町村たばこ税で、65.96円。そして、たばこ特別税。これは今から10年前に日本国有鉄道清算事業団(旧国鉄)及び国有林野事業特別会計の負債を、一般会計に承継させることに伴い生じる負担を補うために創設された。これが16.40円。最後にかかる税金はもちろん、消費税だ。
20本300円のたばこの場合、たばこ税の割合はおよそ175円。消費税とあわせると約63%の税金を「吸って」いる計算になる。
ガソリンにかけられる税金が消費税も含めたところで45.0%、ビールが46.2%というから、たばこにかけられる税金がいかに高いかということがわかる。こうして考えると、喫煙者は毎年2兆円を超える税金を自らの身体を張って負担してくれているわけだから、白い目でみるどころか、逆に感謝しなければならないのかもしれない。
しかし、これが海外に目を向けてみると、イギリスが82.4%、フランス80.9%、ドイツ80.4%、イタリア74.9%(05年実績)となっており、世界的には、日本の税率の低さが際立っているといえる。喫煙者には、何でもかんでも欧米か!!とつっこまれそうだが、こうしてみると、まだまだ税金を上乗せできる余地が残されている気もする。
まさにこれが、たばこ値上げ論者が目をつけたところで、笹川陽平氏の論文のヒントも旅行中のロンドンでたばこが1000円を超える値段で販売されているところを目撃したことから始まっている。

来年度から基礎年金を国庫で負担する割合が3分の1から2分の1に引き上げられることが決まっており、そのために必要な財源は2兆円を超えるという。これだけの財源をまかなうために、いよいよ消費税率アップが現実的な問題として浮上してきそうな気配だが、これに待ったをかけようというのが「たばこと健康を考える議員連盟」なのである。衆院選前に消費税増税を打ち出せない空気のなか、迫害視されつつあるたばこの増税であれば国民の理解も得やすいし、増税によるたばこの値上げで消費量が減っても、たばこによる健康被害が減り、増え続ける医療費の削減につながる。未成年者の喫煙も減り、たばこのポイ捨ても減り、たばこの不始末による火事だって減るかもしれない。なるほど、いいところに目をつけたものだ。
しかし、最重要課題の税収の確保ということに関しては、どうなんだろうか。1000円に値上げして税収が増えるかどうかは、「1000円でもたばこを吸い続ける人がどれだけいるか」にかかってくるからだ。
医学的な立場から喫煙規制を求めている日本学術会議は、1箱1000円に値上げすれば4兆円程度の増収が見込めると試算している。試算によると、価格が600円になるよう税率を上げた場合、喫煙人口は現在の3600万人から3300万人に、たばこ消費量は2700億本から1850億本にそれぞれ減少する一方、現在2兆2000億円の税収は4兆3400億円に増加。価格を1000円にすれば、喫煙人口は3100万人、消費量は1440億本に減るが、税収は6兆2600億円に増えるという。 
試算では喫煙人口はわずか14%の減少しか見込んでいないが、禁煙広報センターが05年に実施したアンケート調査では、400円になったらたばこをやめると答えた人が約4分の1(23.5%)、500円になると半数(51.2%)、1000円になると約4分の3(73.4%)がたばこをやめると回答している。「たばこを1000円にすれば、9割が禁煙を考える」との結果をまとめている研究グループもあり、調査結果はまちまちだ。税収予測は困難と言わざるをえないだろう。
健康問題や環境問題に関しては、実現すればかなり有効な政策だと思うが、税収面を考えるといささか疑問である。

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